間質性肺炎は語尾に肺炎ということばが付きますが、肺炎とはまるで異なる病気です。肺という臓器をコップにたとえるならば、コップの中で起こる病気が肺炎で、コップ自身が侵される病気が間質性肺炎であるイメージです。間質性肺炎の方がより肺の広い範囲で病気が起きており、労作時の息切れなどの症状も強くなります。治療もコップの中を洗えば済む肺炎に比べ、コップ自身の修繕が必要な間質性肺炎は一般的に難治性となります。肺胞の周囲にある壁や肺胞同士の間を埋めて固定している組織、いわゆる間質と呼ばれている部分に炎症が起きているのであり、炎症が発生すると肺胞の壁の正常構造が壊れて、その後に修復されますが、その際に壁は硬く、厚くなってしまいます。人はこの壁を通して酸素を体内に取り込んでいるので、このような状態になると酸素が取り込みにくくなり、結果として労作時の息切れや呼吸困難を感じるようになります。
発病の経過
病気の進行の速度から「急性」「慢性」の2つに分けます。急性間質性肺炎は数日から数週の単位で急速に進行し、慢性間質性肺炎は数か月から数年の単位でゆっくり進行します。慢性間質性肺炎が多くを占めることになります。
原因
多くの場合は原因が特定できないことが多いです。原因不明という意味で「特発性」という言葉が使われ、原因不明の間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」と呼びます。原因が推測されるもので最も多いのは、関節リウマチなど膠原病に関連した間質性肺炎です。他の原因として、抗がん剤や漢方薬などの薬剤性、放射線、真菌(カビ)・鳥(羽毛)・石材・アスベスト・超硬合金原因などを吸入した場合もあります。これらは間質性肺炎という病名ではなく、原因に即した病名が使われます。薬が原因なら薬剤性肺障害、真菌(カビ)や鳥(羽毛)へのアレルギーが原因なら過敏性肺臓炎、職業性の粉塵が原因なら塵肺、石綿肺、超硬合金肺などの名前で呼ばれます。また、喫煙自体が間質性肺炎を進行悪化させます。
症状
症状は労作時息切れと咳(乾性咳;痰の絡まない咳)です。最初は、階段の昇りや坂道、重い荷物を持った時などに息切れを感じますが、病気が進行してくると部屋の中の移動や服の着脱でも起こるようになり、さらに進行するとじっとしていても息苦しくなります。しかし、実際に間質性肺炎として受診される方の多くは無症状で、胸部レントゲンやCT検査の異常が受診動機になっていることが多いです。
診断
間質性肺炎の診断に関しては、3つの分類(①発病の経過 ②原因の有無 ③病気により変化した肺の形態異常)を行い、さらに重症度や活動性(安定度)も評価していきます。診断には胸部レントゲンやCTがとても重要で診断の中心になります。これら胸部画像所見や呼吸機能検査の経時的変化と、KL-6、SP-Dという採血項目などで病気の活動性を評価し、病気の進行速度を知ることも重要です。呼吸機能検査の肺活量や血液中の酸素濃度の低下の程度で病気の重症度を評価します。また気管支鏡(呼吸器内視鏡)による気管支肺胞洗浄(BAL)、経気管支肺生検(TBLB)がとても診断に有用なこともあります。肺生検には、さらに大きな肺の材料を採取する目的で凍結生検(クライオバイオプシー)や手術による外科的肺生検も行われることがあり、それらの詳細な情報は適切な診断と治療に繋がります。
治療
喫煙自体は間質性肺炎を悪化させること、肺がんの合併を増すことから、ただちに禁煙することがとても重要です。間質性肺炎の原因がはっきりしているのであれば、それを避けるようにします。膠原病などの自己免疫異常、特発性肺線維症(IPF; Idiopathic Pulmonary Fibrosis)以外の特発性間質性肺炎によるものであれば、免疫抑制薬やステロイドなどが使用されます。特発性肺線維症は長らく有効な治療法がなく、酸素が欠乏する段階になると自宅でも酸素投与が可能な在宅酸素療法が行われていましたが、ピルフェニドン(ピレスパ®)やニンテダニブ(オフェブ®)の登場により積極的に治療を行うことが可能になりました。これら薬剤による治療は病気の進行を遅らせることが主な目的になります。またIPFに限らず、慢性進行性の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(Progressive fibrosing interstitial lung disease:進行性線維化を伴うILD)に対してオフェブ®は進行性線維化を伴うILDの唯一の治療薬として2020年に承認され、IPF以外の間質性肺炎にも治療の適応が拡大しました。また間質性肺炎の急性増悪時や急性間質性肺炎の治療にはステロイド剤や免疫抑制剤が使用されます。
予後と療養管理
IPFは一般的に数か月から数年単位で少しずつ進行し、息切れが増します。さらに、感冒、手術(全身麻酔下)、大怪我など、体に過度のストレスがかかった際には数日の単位で急激に病気が進行することがあります。この状態を急性増悪と言って治療は非常に困難です。IPFで亡くなる方の40%程度を占めます。また、肺がんの合併も多く、10%程度の方が肺がんで亡くなります。IPFのために手術、抗がん剤投与、放射線照射のいずれにも制限が生じ、肺がんの治療にとても難渋します。IPFの方は、無理のない日常生活を心がけ、感冒には特に注意を払い、肺がんの早期発見のために定期的に肺のCT検査を行うことも重要です。
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- 三沢 昌史 Masafumi Misawa (医学博士)
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